司法試験に合格するために「やらなくていい」8個のこと(1/2)

2021/05/18

司法試験勉強法

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 司法試験を勉強しているとき、勉強方法や教材について色々な話を聞くことがあると思います。


  • 〇〇大学の△△先生の書いた教科書は必読
  • 主要科目の判例百選は全部読んで頭に入れないといけない
  • 予備校には絶対通うべき
  • 条文の素読みをしないと試験のときに対応できない
  • ゼミ形式の答案練習は必ずやったほうがいい


受験生時代の私もそうでしたが、「この勉強方法で本当にいいのだろうか?」という疑問は常に浮かんでくると思います。

毎日長時間を勉強にあてているだけに、「やり方が間違っていたらどうしよう」という不安はかなり大きいものです。

また、他の人がやっている教材や勉強法を自分がやっていないとすごく不利なような、遅れを取っているような気持にもなるかもしれません。

この記事の結論から言ってしまうと、

教材や勉強法で、「これをやらないと落ちる」というものは特に存在しません。

それでも実際に今、試験に受かるために学習を進めている受験生の方にとっては不安が大きいでしょう。そこで、司法試験を受験して合格した経験者の立場から、「これは別にやらなくても大丈夫だよ」ということを具体的にまとめたのがこの記事です。

これを読んで、「あ、別にそこまでやらなくてもいんだな」と少しでも思っていただけると、多少は不安や迷いなく勉強に打ち込むこともできるのではないかと思います。


やらなくていいこと① 誰か特定の先生が書いた教科書や問題集をやる


司法試験の勉強をするにあたって気になるのはやはりどの教材を使うかという部分だと思います。

世の中には法律書というものは無数にありますし、法学部の偉い先生が唱えている学説も様々です。特に刑法なんかだと、結果無価値論、行為無価値論という大きなドグマの対立があり、その中でも無数に学説が枝分かれしていますよね。これって、勉強する側にとってはすごく迷う部分だと思います。

結論から言うと、司法試験に合格するために誰か特定の先生が書いた教科書を必ず読まなければならないということはありません。

各科目について、いわゆる基本書と呼ばれるベーシックな概説書は一通り読んだほうがよいとは思いますが「〇〇先生の△△総論じゃないと」みたいなのは特にないです。

自分が大学で勉強したときに指定された教科書が使い慣れていると思いますからそれをそのまま使えばいいですし、私もそれで問題なく合格できました。

司法試験の論文問題は、何か特定の学説に立たないと解答できないとか大幅に点数が落ちるというようなものではありません。一般的に通用している学説なのであればどの見解に立って書いても合格は問題なくできます。

問題集に関しても同じです。

普通に市販されている問題集であれば一定のクオリティは担保されていますから、どれをやっても実力は身につきます。もちろん予備校が出している問題集でも何も問題ありません。

教材選びで時間をかけたり、迷って色々と手を出したりするよりは今おうちにある本をしっかりやるのに時間をかけましょう。

法律書は高いですから書籍代にたくさんお金をかけないようにしましょう。浮いたお金で健康な食事をしたり、息抜きができるようなアクティビティに使ったりした方がずっと有意義です。

やらなくていいこと② 判例百選を全部読む


判例百選。これを全部読まないと、場合によっては事案と判旨を憶えておかないと合格できないんじゃないだろうかという心配は受験生の方の多くが持っているかもしれません。

大丈夫です。主要科目の判例百選を読破したり、ましてや暗記したりしなくても問題なく司法試験には受かります。

百選の中にも「重要度の高い判例」と「それほどでもない判例」というのがあります。

問題集や過去問をやっていく中で出会う判例は当然「重要度の高い判例」ですから内容をきちんと理解しておくとよいでしょう。そういう判例は繰り返し出てくるのでそのたびにきちんと事案や判旨をおさらいしておくようにするといいと思います。

そこを超えて、判例百選を隅から隅まで読むことまではしなくても大丈夫です。もちろんやればやっただけ勉強にはなりますし、判例を読むのが好きな人はそういう勉強法でもいいと思います。しかし、無理にこれをやらないと、と考える必要はまったくありません。

おすすめとしてはやはり「問題解答に当たって出てきた判例をその都度しっかり理解していく」ということです。そのほうが頭から判例百選を読むよりも定着度もよくなるはずです。

開いたことのない判例百選のページに圧倒されたり、不安を感じたりする必要はないということは憶えておいてください。


やらなくていいこと③ 条文の素読み


私が受験生をしていたとき、この「条文素読み」という勉強法の有効性というか重要性がまことしやかに受験生の間で流布していました。

聞いたことがない人もいるかもしれないのでどんな勉強法かを簡単に説明すると、

主要法令について六法の条文を1条から順番に最後まで読んでいく

というなかなか力技っぽい勉強法です。

この勉強法、決して無駄というわけではありません。特に会社法など、条文操作が重要になる科目の場合は法令の条文に慣れておくと答案を書きやすいはずです。

ただ、合格後に思い返してみてこの勉強法が必須かというと決してそうではなかったなと思います。

条文素読みの勉強法の問題点は2点あります。

  1. 条文の中には読まなくてもいいような些末なもの、重要度の低いものもあるので全部通して読むのは非効率的
  2. 法令の条文は非常に無味乾燥なので読んでいて眠くなる


特に重要なのは2つめですね(笑)

条文素読みをしたことのある人はわかると思いますが、10条も読めば間違いなく目蓋が落ちてきます。

やっていて眠くなってくるような勉強というのは当然集中力が続かずに定着度は低くなりますし、そういう勉強法を継続するのは心理的な大きな負担になります。

条文構造や条文操作に慣れておくのは役に立つことですが、それは問題を解くときに出てきた条文を逐一調べるようにすれば自然と身につきますし、それで十分です。

条文素読み、特に苦にならずにやれる、あるいはやっていて楽しいと感じる方であればご自分に合った勉強法なのでやったらいいと思います。

しかし、これをやらなければ合格は覚束ないなどと自分を責めたり追い込んだりする必要は一切ありません。



やらなくていいこと④ 最高裁判所の調査官解説を読む


これも私の受験生時代に誰が言い出したのかはわかりませんが受験生の間で広まっていた「効果的な勉強法」でした。

過去問の分析などをもとに最高裁判所の調査官解説に出てくる考え方や問題意識などが司法試験の本試験の出題に反映されている、ということからそうした勉強法が有効だという説が広まったようです。

もちろん調査官解説は問題となる法的論点について学説などもよく整理されており、読めば勉強になります。

しかし、これを読むのが合格にとって必須かというと決してそうではありません。

また、調査官解説を読むという勉強法が合格のために効率的な勉強法であるとも言えないと思います。

というのは調査官解説が出ている判例というのは本当に無数にありますし、内容も非常に厚みがあるのでこれを全部読もうとしたら10年勉強しても時間が足りません。

私も一時期少し読んで勉強しようと思ったことがありましたが早々に挫折した勉強法です。それでも問題なく合格はできました。

「調査官解説を読まないと」と焦ったり不安になりながら勉強する必要はありません。そんなことをしなくても司法試験にはちゃんと合格できるので大丈夫です。


他にもやらなくてもいいことはある



この記事ではひとまずやらなくてもいいことを4つ紹介しました。

それ以外にも合格のためにやらなくてもいい勉強法としては次のようなものがあります。


  • 予備校に通ったり予備校の模試を受ける
  • 問題集を1冊通してやりきる
  • ゼミ形式で答案練習をする
  • 毎日〇時間勉強する


これらについては次の記事で詳しく説明します。

そして、逆に「合格するためにやらないといけないこと」についても次の記事で触れたいと思います。



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長崎で中小企業・個人事業主を主なクライアントとする法律事務所を開設している弁護士です。 東京で3年超、企業法務を扱う法律事務所でアソシエイト(勤務)弁護士として働いた後、外務省のJPO(Junior Professional Officer)制度で推薦を受けて国連の専門機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の駐日事務所で2年間、法務担当の国際スタッフとして勤務しました。 その後、長崎で中小企業法務を扱う「長崎国際法律事務所」を開設しました。現在は中小企業向けの経営相談機関である「長崎県よろず支援拠点」の相談担当コーディネーターとしても稼働し、毎月多くの経営者からのビジネスに関する法律相談を担当しています。 知的財産(知財)に関する法律を専門としており、「長崎県知財総合支援窓口」にも専門家として登録して地元企業の特許、意匠、商標、著作権、営業秘密などに関する相談に対応しています。知的財産教育協会の認定する知的財産アナリスト(特許)の認定も受けています。 ■ 資格 弁護士資格有・登録済み(長崎県弁護士会所属) IELTSスコア7.5 知的財産アナリスト(特許) ■ 著作 「弁護士が教える中小企業・個人事業主のための法律の教科書」 「弁護士が教える中小企業・個人事業主のための弁護士の上手な『使い方』」 「弁護士が教える中小企業・個人事業主のための裁判の教科書」

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