【司法試験勉強】司法試験合格のために役に立った勉強法3選

2021/05/20

司法試験勉強法

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このブログは司法試験の勉強への取り組み方を現役の弁護士が解説するものです。

本ブログの趣旨と執筆者である私の自己紹介はこちらの記事に詳しく書いてありますので興味のある方は読んでみてください。

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これまでこのブログでは「合格のためにここまでしなくても大丈夫」ということを受験生の方々にわかっていただくために「やらなくていい勉強法」をまとめた記事を書きました。


司法試験に合格するために「やらなくていい」8個のこと(1ページ目)

司法試験に合格するために「やらなくていい」8個のこと(2ページ目)




もちろん上の記事で書いた勉強法に意味がないとか、「そんなことをしていたら落ちる」とか、そういう意図があるわけではありません。

「合格のためにあれもこれもやらなきゃ!」というプレッシャーを感じずに勉強を進めていくために「無理にやらなくても大丈夫なライン」を受験生の方にわかってもらいたいと思って書いた記事です。

どんな勉強法であれ司法試験の試験科目に関する勉強であれば必ず意味はあります。

人によって向き・不向きがあったり、効率性に違いがあったりするのでその点に注意してどんな勉強法がいいのか考えることが大切です。

今回の記事では私の受験生時代の経験に照らして、実力を身につける上でこれは役に立ったというものを紹介します。ただ、これはあくまで「私には向いていた」勉強法なので全ての受験生の方に同様に当てはまるかどうかはわかりません。

それでも「こういう勉強法もあるんだな」ということに気付くヒントになると思います。この記事を読んで自分でも取り入れられそうなものがあれば試してみていただくのがよいでしょう。



勉強法① 短時間答案練習法


一つ目に紹介するのが自分としては一番お勧めの勉強法です。

これは名前のとおり論文答案を書くときに通常よりも短い制限時間を設けて、その時間内に書き切る練習をするというもの。

答案を書く練習、すなわちアウトプット型の勉強は司法試験を合格するために必須です。教科書や参考書などでどれだけインプットをしっかりしていてもそれを文章にして表現するのに慣れていないと本番で満足のいく答案を書くことは困難です。

そのため問題集や過去問などを使った答案練習は必ずする必要のある勉強です。そして、こうした「書く練習」をする際に大切なのは「時間を測って書く」ということ。

答案練習の際に1つの問題に3時間も4時間もかけて立派な答案を書けたとしても本番では時間内に書き切ることができません。本番の解答時間の中で書き切れるような答案を書く練習をする必要があります。

そのため、この「時間を測って書く」という勉強法は多くの人が意識して取り組まれていることと思います。

ここで紹介するのはそのさらに応用編です。

それは問題ごとに設定されている解答時間よりも短い時間内に答案を書き切る練習をするということです。

たとえば、解答時間が60分とされている問題であれば50分、40分、あるいは半分の30分の時間で最後まで書き切る練習をしてみます。

受験生時代、私は答案練習の際、いつも既定の解答時間の半分の時間で答案を書くようにしていました。たとえば2時間の解答時間が設定されている問題であればその半分、1時間以内に全て書き切るように練習します。

この勉強法には次のようなメリットがあります。


  • 時間あたりの記述量・処理量を増やすことができるので本来の制限時間をフルに使えば厚みのある答案を書くことができるようになる
  • 答案構成を手早く済ませたり、それほど重要でない論点を簡潔にまとめたりすることができるようになるため本番で焦らずに余裕を持って問題に取り組むことができる
  • 普段の勉強の際、1問を解く時間を短縮できるので効率的に勉強できるようになる



個人的にはこの勉強法のおかげで本番での精神的な余裕をかなり持つことができました。

普段から司法試験の過去問も半分の時間で解くように練習していましたので、「自分は他の受験生よりも本番では2倍の時間を使える」と思うことで心にゆとりが生まれます。プレッシャーのかかる本番でこう思えるというのは非常に大きなアドバンテージです。

もちろん本来の制限時間の半分で書くのはかなり大変です。練習し始めたときは途中答案のようになってしまうケースもあるでしょう。

無理なく時間を短縮していくように、たとえば最初は本来の制限時間内で書き切る練習から始め、10分ずつ時間を減らしていくようにしていってもよいと思います。

コツとしては3つあります。

  1. 答案構成を手早く済ませるようにする(書きながら構成を考えるくらいの気持ち)
  2. よく使う規範定立や論証は何も考えずに書けるように頭に入れておく
  3. 重要でない論点や冒頭の問題提起は簡潔に済ませるようにする

この勉強法で問題集や過去問を回せるようになってくると、勉強時間を非常に効率よく使えるようになります。最初はかなり負荷のかかる勉強でしんどいかもしれませんがぜひ試してみてください。




勉強法② アウトプットファースト


何やらかっこよさげなネーミングを考えましたが、要するに「教科書や基本書などでインプットする前にとりあえず答案を書いてアウトプットしてみよう」という勉強法です。

実はこれは意図的にそうしようと考えてこういう勉強法をしていたわけではなく、何も考えずにやっていたところ、後で思い返してみると役に立った勉強法だと思えたのでここで紹介しています。

私は基本書や教科書で論点を確認してから問題集を解くのではなく、とりあえず問題集の問題を先に解いてみるという勉強法をずっと続けていました。

そうした勉強の仕方なので、当然全然知識がない論点が出てくる問題にあたることもあります。その場合でも白紙で終わらせて解説を読むのではなく、無理やり自分の頭で考えて答案を完成させてから解説を読むようにしていました。

お聞きになればわかるとおり、これはあまり効率の良いやり方ではないと思います。書き終わって解説を読むと自分の書いていたことが全然的外れで苦笑するということもしばしばでした。

しかし、勉強を進めて行って司法試験の本番間近になってくると、こういう勉強法を続けたことにも意味があったと思えて来ました。

というのは、ほとんど知識がない論点や知らない判例を題材にした、いわゆる未知の問題が出たときも何とか自分の頭で考えてそれなりに筋の通った答案を書くことができるという自信が生まれたからです。

未知の問題にぶつかったとき、大切になるのは次の3つです。アウトプットファーストで勉強して、よく知らない論点であっても答案を書く練習をすることでこの3つのことができる力が身につきます。


  1. 問題文に出てくる事実を読み取って分析する
  2. 未知の論点に関して自分の知っている論点や類似するケースの法解釈に引き付けて検討する
  3. 全体として筋の通った論理構成で文章を組み立てる


知っている論点の問題であれば、ある程度パターンに当てはめて書くことで上のような面倒な工程を省くことができます。だからこそ論点についての知識を身につけたり、判例を勉強したりしておくのは非常に有益です。

しかし、世の中に無数に存在する論点や判例を全ておさえておくことは不可能です。本番ではどうしても未知の論点にぶつかる場面も出てくるでしょう。

アウトプットファーストで日頃から勉強しておくと、そのようなケースでもその場で自分の頭で考えてそれなりの答案が書けるようになります。

私は大手の司法試験予備校で答案添削の仕事もしていますが、添削をしていてほとんど真っ白の答案が提出されてくるのに出会うことがあります。おそらく前提となる知識がなかったために何を書いてよいかわからなかったのだと思いますが、こういう場面でも自分なりに問題文の状況を分析して、該当しそうな法令の条文を参照し、一応の答えを出すということができるといいだろうなと思います。

本番で未知の論点にぶつかったとしたらそうせざるをえないわけですからね。

「わからない問題でもとりあえず最後まで書いてみる」

これは一見遠回りに見えますが未知の問題への対応力を身につける上ではかなり役に立つ勉強法ではないかと思います。


勉強法③ 基本書の音読


上記2つの勉強法は書く勉強、いわゆるアウトプットに関する勉強法でした。

3つ目の勉強法はインプットに関するものです。

勉強法としては非常にシンプルで、基本書や参考書を読むときに字面を目で追って黙読するのではなく声に出して読むとよいということです。

これは語学の勉強法などに関してよく言われていることですが、黙読だと目からの刺激しかないのが、音読にすると自分の口で言葉を発し、かつそれを自分の耳で聞くという刺激も加わり、内容がより頭に定着しやすいと考えられています。

黙読に比べると声に出すと多少読むスピードは落ちるかもしれませんが、定着度を高めるという意味では音読は良い勉強法だと思います。

大学の自習室など声を出すことのできないシチュエーションの場合は仕方ありませんが自宅で机に向かって教科書を読むときなどは声に出して読んでみるとよいでしょう。

声を出して本を読むことは頭への定着度の点以外にもメリットがあります。

それは眠くなりにくいということです(笑)

法律の本は難解で固い文章で書かれているため疲れているときに読もうとするとどうしても眠くなってしまいます。下がってくる目蓋と格闘しながら本を読むのは効率的とはいえません。

こういう場合、早めに就寝したり、仮眠を取ってクリアな頭で勉強するというのも一つの手ですが、音読をしてみるというのも効果的です。

口を動かして声を出すことで脳が刺激されるため黙読よりも眠気に襲われにくくなるでしょう。

眠気の話が出たので少し脱線すると、教科書や参考書を読むときは机に向かわずに立ち上がって読むのも良い方法です。立ったまま使う、いわゆるスタンディングデスクを使ったほうが作業効率が上がり、健康にも良いという研究結果も出ているようです。

書く勉強をするとなるとスタンディングデスクなどの設備を整える必要が出てきますが、読む勉強であれば手に本を持って立ち上がれば済む話なので気軽に始められるでしょう。机に向かう勉強に飽きてきたときは立ち上がって本を読むことにしてみてもいいと思います。そのとき黙読ではなく音読にするとさらに効果的です。

この音読は主としてインプットに関する勉強法ですが、実はアウトプットに応用することもできます。それは音声入力を使う方法です。

最近はGoogleドキュメントやスマホの各種アプリなどを使って手軽に質の高い音声入力ができるようになっています。論文答案の作成をこうした音声入力を使ってやってみるのも良いアイディアです。これは手書きの長文を書き過ぎて腱鞘炎になるのを予防する上でも役に立つでしょう。



一番は「自分に合った勉強法」


以上、この記事では私が受験生時代に実際にやっていた勉強法を紹介しました。どれも効果的な方法だと思いますので一度試してみていただけるとよいと思います。

しかし、冒頭でも書いたとおり、ここで紹介している勉強法が唯一絶対のものではありません。人によって合う・合わないという部分もありますし、「この勉強法で勉強しなければ不利」だとか、ましてや「このやり方じゃないと合格は覚束ない」などということもありません。

司法試験の勉強にとって大切なのはかなりの長期間、継続して努力し続ける、ということです。それができれば合格しますし、途中で心が折れて諦めてしまうと合格はできないということになります。勉強法はある意味二の次であり、大切なのは勉強を無理なく続けるということです。

どんなに効果的、効率的とされている勉強法であっても自分に合っていないやり方のものを続けるのはしんどいです。しんどい勉強法を続けるのは自分の心や体に無理が出ます。無理がかかった状態を何年も続けるのは大変で、途中で挫折するリスクを生みます。

世の中には司法試験合格のために色々な勉強法やメソッドが流布していますが、大切なのは色々試してみてその中から自分に合ったものを選ぶようにするということです。繰り返しになりますが「この勉強のやり方じゃないと合格できない」というものは存在しません。

受験生一人ひとりには異なる個性や能力の凹凸があります。それを無視して十把一絡げに「こうやって勉強しなさい」というのはあまりにも乱暴な話ですし、私は上手くいかないと思います。

勉強法に自分を合わせる必要はありません。自分に合った勉強法を見つけて、できるだけ無理をせずに合格まで勉強を続けていくことを目指していきましょう。




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長崎で中小企業・個人事業主を主なクライアントとする法律事務所を開設している弁護士です。 東京で3年超、企業法務を扱う法律事務所でアソシエイト(勤務)弁護士として働いた後、外務省のJPO(Junior Professional Officer)制度で推薦を受けて国連の専門機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の駐日事務所で2年間、法務担当の国際スタッフとして勤務しました。 その後、長崎で中小企業法務を扱う「長崎国際法律事務所」を開設しました。現在は中小企業向けの経営相談機関である「長崎県よろず支援拠点」の相談担当コーディネーターとしても稼働し、毎月多くの経営者からのビジネスに関する法律相談を担当しています。 知的財産(知財)に関する法律を専門としており、「長崎県知財総合支援窓口」にも専門家として登録して地元企業の特許、意匠、商標、著作権、営業秘密などに関する相談に対応しています。知的財産教育協会の認定する知的財産アナリスト(特許)の認定も受けています。 ■ 資格 弁護士資格有・登録済み(長崎県弁護士会所属) IELTSスコア7.5 知的財産アナリスト(特許) ■ 著作 「弁護士が教える中小企業・個人事業主のための法律の教科書」 「弁護士が教える中小企業・個人事業主のための弁護士の上手な『使い方』」 「弁護士が教える中小企業・個人事業主のための裁判の教科書」

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